西野こういち ほっとかれへん! 30年後の日本人も幸せで居られる社会を。

安全保障に係るブリーフィング・レポートについて

2015.10.26

アメリカ海軍研究所からの安全保障に係るブリーフィング・レポートを頂いたので、私なりにまとめてみました。

 

安倍首相による米国議会における演説は、米連邦議会議員に評価されているようです。ただし、そのことはなにも安倍首相が米国を持ち上げたから気分を良くしているのでも、安倍政権の政治姿勢を評価しているのでもありません。連邦議会という米国最高の場で、安倍首相が、「日本の国防方針の大転換」を進めることを宣言、公約したことを評価しているのです。

 

オバマ政権下で国防予算が大幅に削られ、米軍の実質的戦力は目に見えて低下しています。同盟国である日本に自主防衛力の強化を求めることは、アジア太平洋地域での軍事的優位を維持する苦肉の策であり、だからこそ、「日本の大転換」を支持するのです。

民主主義国家である日本の首相が、本場の米国の連邦議会で「日本の防衛政策の抜本的転換」を明言した以上、その公約が口先だけに終わってしまった場合には、「トラストミー」の比ではない失望と軽蔑が日本全体に向けられます。

 

2015版日米防衛協力のための指針から、アメリカ軍は矛、自衛隊は盾という原則が消えました。早くも、「南シナ海における紛争海域にアメリカ海軍を多数派遣すべき」との声が米軍関係者で大きくなってきています。南シナ海に展開したアメリカ軍は自衛隊から兵站の補給を受けるだけでなく様々な軍事的支援を受けることが可能となると、少なくともアメリカ側は理解しているようです。

 

「自分の国は一義的には自分で守る」が同盟国間の国際常識です。しかし原則とはいえ、自衛隊が盾だけでなく矛の役割を果たすには、意図的に封じ込めてきた打撃力や機動力を身に付けなければならないことを意味し、当然のことながら想定すべき戦闘の強度は増大します。戦死や戦傷、PTSDへの対策、家族の保護やケアー、それに政府機関やメディアの態勢など、今まで全く議論されなかった軍事社会学的諸政策の整備が急がれます。

 

さらに、いくら安全保障関連法案を法令化しても、軍事社会学的法令が完備されたとしても、あるいは憲法9条を改正できたとしても、国防予算がGDP比1%程度という現状を維持する限り、安倍首相の積極的な国防方針は実施不可能です。陸、空、海、全てにおいて米軍に期待していた盾の役割を担うためには、現状の2倍程度は必要というのが、多くの専門家の意見です。

 

現在審議中の安全保障法制のように、入口論、概念論争に終始している場合ではありません。

主要国軍事費

 

南シナ海での中国による人口島建設に対して、米国が遅ればせながらも批判を強めています。南沙諸島の中国海洋基地群により、南シナ海が中国人民解放軍の勢力圏に入ってしまうことで、既存の米軍極東軍事戦略が大打撃うけ、米国の面子も大きく損なわれてしまいますが、米国の国防そのものに致命的影響が生じるものではありません。中国が南シナ海を軍事的コントロール下に置くことで、軍事的にも経済的にも致命的打撃を受けるのは日本です。

 

日中が直接軍事衝突に至らなくても、「南シナ海を航行する日本との貿易に従事するタンカーや貨物船の航行を遮断する」と中国が宣言をすれば、日本向けの船舶は迂回航路の通航を余儀無くされます。これにより、航海日数は何倍も必要になり、保険料や人件費は暴騰し、原油や天然ガスの高騰は避けられなくなります。わずかな期間であっても、日本経済と国民生活へのダメージは深刻となります。

南沙諸島における中国の人工島、海洋基地建設だけをとっても、日本の存亡に関わりかねない極めて深刻な事態との認識が必要です。国会において認識のない議論が続けば、我が国存亡の危機の到来を現実に近づけてしまいます。落選中で、直接国会での議論に参画できませんが、一人でも多くの方に、安全保障における日本と周辺国の現状を伝え、認識を共有いただけるよう活動して参ります。