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09春 インターン生レポート

2009年04月16日 【カテゴリー:09春 インターン生レポート】
時効撤廃について

刑事事件における時効、公訴時効とは「検察が被疑者を公訴できる期間」のことを指します。
 時効期間が過ぎると、捜査によって加害者が判明した場合でも、加害者を検察が公訴し裁判を開くことができなくなります。つまり法廷ではその罪を問い、事件の真相を究明する機会が失われてしまうということになるのです。

 ここで東京都で起こったある事件を紹介します。
1978年、東京都足立区に住む29歳の女性が同校用務員の男性に殺害される事件が起こりました。加害者の男性が女性の遺体を自宅の庭先に隠蔽していたため、犯行が発覚したのは事件発生から26年がたった後のことでした。

 加害者がわかった時、彼女の遺族は加害者に罪を償うように求めました。しかし、刑事事件における殺人の時効は当時15年であったため、犯行から15年以上が経過していた今回の事件では、時効が成立しており、裁判を行うことはできませんでした。

 では、なぜこの時効という制度が存在するのでしょう。

 日本における時効の起源は江戸時代にさかのぼります。1742年、公事方御定書に犯行時から12ヶ月経てば公儀(幕府・朝廷)から処罰を受けないという制度がありました。
 明治時代には仏・ナポレオン法典を手本とした治罪法が制定され「証拠の散逸」を主な理由として、殺人事件などの重罪に10年の時効期間が制定されました。
 この後、何度かの制度改正を経て
 第2次大戦後の1948年、現在の刑事訴訟法が制定されるにともない、時効制度に関しても戦前の15年という制度を踏襲しました。
 2005年犯罪被害者基本法の成立にともない、時効期間が25年まで延長される法律も制定され、現在に至ります。
 こうして見ると、日本における時効制度は100年も前に作られたものをそのまま採用しており、制度の具体的な内容、現代における必要性について明確な根拠を提示するには至っていないのです。

 現在時効の正当性に関して大きく4つの主張がなされています。「時間の経過により処罰感情が薄れる」「長い逃亡生活が加害者を実質罰している」「捜査機関に無制限に負担がかかる」「時の経過によって証拠が散逸する」というものです。
 しかしこうした主張もよく考えてみると必ずしも説得力のあるものだとは言えません。1つ目の「時間の経過により処罰感情が薄れる」に関しては被害者感情は、時と共に増すことはあっても決して薄れることはなく、犯罪被害者の実情を無視した主張と言えます。また、2つ目の主張に関しては犯罪によって被害者の苦しみはずっと続くにもかかわらず、原因を作り出した加害者が法によって刑罰を逃れるというのはあまりにも不公平ではないでしょうか?
 3つ目の捜査に負担に関してはコールドケース、つまり新たな証拠が得られれば時効を解除する制度を導入するなど工夫次第で負担を軽減することはいくらでも可能です。
 4つ目の証拠の散逸は犯罪科学捜査技術、特にDNA鑑定の進歩によって、たとえ犯行から数十年経った後でも被疑者を立件するための証拠を得ることができ、時代遅れの主張となっています。

 このように従来の時効の正当性に関する主張は、どれも説得力があるものとは言えないのです。

 では、諸外国において時効制度はどのように定められているのでしょうか?アメリカでは殺人などの重大事件において時効は存在しません。また、イギリスでは全ての事件に時効は適用されません。その他、ドイツではユダヤ人虐殺などの民族謀殺や非人道的行為の罪に時効は無く、無期懲役に当たる罪には30年の時効期間が定められています。フランスでも集団殺人などの非人道的行為には時効が無く、殺人や傷害致死などの重罪に対しては10年の時効期間が定められています。
 またアメリカやフランスでは、時効を軽減するものとしてコールドケースや時効停止といった制度が設けられています。
 こうして見てみると、諸外国の時効制度は幅広い視点から柔軟な対応を行っており、比べて日本の時効制度は遅れていると言えるでしょう。

 では、なぜ日本ではこのように不条理ともいえる時効制度が設けられているのでしょうか?
 そこには日本の刑事司法の一つの問題点があります。
 刑事司法では検察、つまり国家と被疑者、つまり個人が対立して裁判を行うことになります。そこで個人である被疑者の権利を守るための様々な法律が定められています。時効制度も先ほどの正当性の主張の中にもあったように、被疑者の保護といった考えがあります。
 その一方で、被害者は事件の当事者にもかかわらず、長い間裁判に直接出来なかったなど、刑事司法の場から遠ざけられてきており、その権利を守る法律もほとんど存在しませんでした。
 こうした被疑者重視、被害者軽視の考え方が時効制度の根底に存在するのです。

 しかし近年、被害者の立場を守るための運動が盛んになってきています。2008年には被害者も刑事司法の場に参加できる制度も導入されることになるなど、被害者の権利の見直しも少しずつ進んできています。
 さらに、今年5月から始まる裁判員制度によって、一般の市民が刑事裁判に参加することになり、司法の場にも市民の意見が求められることになります。今まで私たちが関わってこなかった刑事司法の分野に関しても国民参加が求められることになります。
 そんな今こそ、日本の時効制度の在り方についてもう一度考え直す時ではないでしょうか。

09春インターン生   烏田亮之 中塚貴充 前野勇気 山﨑麻貴

日時: 2009年04月16日 15:45 | | コメント (0) | トラックバック (0)